Windows 11 の USB AutoPlay で LAN内から無人 SYSTEM Takeover(CVE-2026-45778)— KeepassXC等の資格情報も窃取可能

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Windowsのプラグ・アンド・プレイ(Plug and Play:PnP)による自動ドライバー導入を利用し、複数ベンダーの署名済みソフトウェアに存在する弱点を組み合わせて、Windows 11上でSYSTEM権限を取得する攻撃研究「Plug & Pwn」が公開されました。

この研究は、2026年8月6~9日に米ラスベガス・コンベンションセンターで開催されたセキュリティカンファレンスDEF CON 34で発表されたもので、研究者は発表に合わせて技術資料、デモ、検証用ツールなどを公開しています。

研究を公開したAlejandro Hernando氏とBorja Martinez氏は、完全に更新されたWindows 11環境で、利用者がログインしていない状態からUSBデバイスを接続した場合でも、Windowsが適合するドライバーパッケージやベンダー製コンポーネントを取得・導入する仕組みを利用して、最終的にWindowsの高権限アカウントであるNT AUTHORITY\SYSTEMとしてコードを実行できることを実証しています。

ただし、今回の研究を「Windows 11にUSBを挿すだけで必ず乗っ取れるゼロデイ」と理解するのは正確ではありません。Plug & Pwnは単一のCVEではなく、Windowsが提供する正規のPnPインストール経路と、Sierra Wireless、Sony、Intel、Wacom、Atherosなど複数ベンダーのソフトウェアに存在する問題や危険な実装を組み合わせた研究です。

また、研究者はリモートデスクトッププロトコル(Remote Desktop Protocol:RDP)のUSBリダイレクトを利用し、物理的なUSBデバイスを接続しなくても低権限ユーザーから同じPnPインストール経路へ到達する「NoPlug & Pwn」も実証しています。ただし、この遠隔経路にはUSB/PnPリダイレクトが有効になっていることが必要で、Microsoftの現在の文書ではWindows OSの既定設定で低レベルUSBリダイレクトは許可されていません。

Plug & Pwnの概要

項目 内容
研究名 Plug & Pwn / NoPlug & Pwn
研究者 Alejandro Hernando氏、Borja Martinez氏
主な対象 Windows 11のPnPによるドライバー・ベンダーソフトウェア導入経路
物理経路 USBデバイスをエミュレートし、複数ベンダーの弱点を連鎖
遠隔経路 RDP USBリダイレクトが有効な環境で仮想USBデバイスを提示
実証した権限 NT AUTHORITY\SYSTEM
利用者操作 物理デモではログインや管理者承認なしで成立
単一CVE なし。複数ベンダーの問題とWindowsの正規機能を組み合わせた研究
公開概念実証(Proof of Concept:PoC) あり
実悪用 公開情報では確認されていない

なぜUSB接続から高権限処理が始まるのか

Windowsでは、新しいハードウェアが接続されるとPnPがデバイスの識別情報を読み取り、その機器に対応するドライバーパッケージを探します。Microsoftの公式文書でも、Windows Updateはデバイスに一致する自動・重要ドライバーパッケージを検索し、条件に合うものを提供する仕組みが説明されています。

ドライバーパッケージには、単純なカーネルドライバーだけでなく、インストールを補助するコインストーラー、サービス、補助実行ファイルなどが含まれる場合があります。研究者は、このインストール処理を担当するWindowsのデバイスインストールサービス(Device Installation Service)がSYSTEM権限で動作し、適合するパッケージが自動導入可能な場合には利用者によるユーザーアカウント制御(User Account Control:UAC)の承認を伴わず、特権的なインストール処理へ進むことを確認しました。

つまり、Windowsが署名済みのドライバーやベンダー製ソフトウェアを正規の更新経路から取得していることと、そのパッケージ内部の処理が論理的にも安全であることは別問題です。

研究者はこの違いを利用し、「Windows Updateから正規に届く署名済みパッケージの中に、低権限ユーザーや外部入力から操作できる危険な処理が残っていた場合、PnPがその脆弱なコードを高権限で自動的に導入する」という攻撃面を示しました。

物理USBを使うPlug & Pwn

最初の実証では、完全に更新されたWindows 11 PCとUSBデバイスを模擬できる専用ハードウェアを使用しています。対象Windowsには事前に攻撃用ソフトウェアを導入せず、利用者もログインしていません。

攻撃側は実在するUSB製品になりすましたデバイス情報をWindowsへ提示します。Windowsはその識別情報に適合する署名済みドライバーやベンダー製コンポーネントを正規のPnP経路で取得し、インストールします。

研究者が公開した代表的な物理チェーンでは、Sierra WirelessとSony FeliCa関連のコンポーネントに存在する別々の問題を組み合わせています。

Sierra Wireless側のサービスには、低権限の利用者からシステムのDNS設定へ影響を与えられる問題がありました。一方、Sony FeliCa関連のインストールコンポーネントには、暗号化されていないHTTP通信で取得した設定を信頼し、SYSTEM権限で任意の場所へのファイル書き込みにつながる問題がありました。

研究者はこれらを連鎖させることで、正規ベンダーのパッケージをWindows自身に導入させ、その後の処理を利用してSYSTEM権限でのコード実行まで到達しています。

重要なのは、単一の深刻なWindowsカーネル脆弱性を利用したわけではないことです。個別には低い深刻度と見なされ得る問題や、「製品の仕様」と判断される可能性のある挙動でも、別製品の弱点と組み合わせることで権限境界を越える攻撃チェーンになることを示しています。

本記事では安全上の理由から、なりすます具体的なUSB識別子、ネットワーク設定の変更方法、ファイル書き込み先、実行ファイルやライブラリの名称、公開PoCの実行手順など、攻撃の再現に直接利用できる情報は掲載しません。

ログインしていなくても成立した点が重要

物理デモの特徴の一つが、利用者のログインを必要としなかったことです。

研究者の実証環境では、Windows 11のログイン画面にある状態でエミュレートしたUSBデバイスを接続するとPnP処理が開始され、必要なパッケージが自動的に導入されました。研究者は最終的にSYSTEM権限のコード実行を示すことで、攻撃が単なるユーザー権限内のUSB攻撃ではないことを確認しています。

従来のBadUSB型攻撃では、USBデバイスがキーボードとして振る舞い、利用者がログインしているデスクトップへキー入力を送る手法が知られています。Plug & Pwnはこれとは異なり、Windowsのデバイス認識・ドライバー導入処理そのものを攻撃面として利用します。

そのため、「画面ロック中だから不審USBによる影響は限定的」と考えるだけでは不十分です。企業端末で物理USBポートへ第三者がアクセスできる環境では、OSへログインできない人物であってもデバイス接続自体を実行できる点をリスク評価に含める必要があります。

RDP経由の「NoPlug & Pwn」

研究者はさらに、物理的なUSB接続を必要としない経路も示しました。

RDPには、利用者側PCへ接続されているUSB機器をリモートセッション側へ転送するUSBリダイレクト機能があります。Microsoftの公式文書でも、低レベルUSBリダイレクトでは、リモート側Windowsで物理接続時と同じ手順により対象USB機器のドライバーがインストールされると説明されています。

研究者はこの仕組みを解析し、RDPクライアント側から送られるUSBデバイス情報を利用して、実在する物理デバイスがなくてもリモート側WindowsへPnPデバイスを提示できることを実証しました。

遠隔デモではIntel RealSense関連の署名済みソフトウェアを利用しています。このパッケージには、SYSTEM権限で動くインストール処理が一般ユーザーから書き込み可能な場所に補助実行ファイルを配置し、その場所からダイナミックリンクライブラリ(Dynamic Link Library:DLL)を検索する問題がありました。

その結果、条件を満たすRDP環境では、管理者権限を持たない通常ユーザーがPnPによるドライバー導入を遠隔から発生させ、最終的にSYSTEM権限へ昇格できることが示されています。

RDP経路は既定状態ですべてのWindowsに成立するわけではない

NoPlug & Pwnについて最も重要な条件は、RDPのUSB/PnPリダイレクトが許可されていることです。

Microsoft Learnの2026年時点の文書では、Windows OSの既定構成で低レベルUSBリダイレクトは許可されていません。リモート側でも「サポートされるPlug and Playデバイスのリダイレクトを許可しない」というポリシーを明示的に変更する必要があります。

ローカル側にも、対応USB機器をRDP経由で転送するための設定が必要です。したがって、「RDPポートが開いているWindows Serverなら誰でも遠隔SYSTEM取得できる」という内容ではありません。

一方、仮想デスクトップ基盤(Virtual Desktop Infrastructure:VDI)などでは、Webカメラや業務用USB機器をリモート環境で利用する目的でUSBリダイレクトを意図的に有効化している場合があります。研究者も、このような運用環境をNoPlug & Pwnの現実的な対象として挙げています。

RDPを利用している組織では、RDP自体の有効・無効だけでなく、どのデバイスリダイレクト機能を許可しているかを確認する必要があります。

WacomとAtherosでも同じ設計上の問題を実証

研究者はSierra Wireless、Sony、Intelだけでなく、WacomとAtherosの署名済みベンダーソフトウェアでも、PnPが高権限コードを導入することによって利用可能になる攻撃要素を検証しています。

Wacom側では、サービス内部に特定の設定条件を満たすとSYSTEM権限のコマンド実行につながる処理が存在することを確認しています。研究者自身も、これを意図的なバックドアとは断定せず、デバッグ用、サポート用、内部機能などの可能性があると慎重に説明しています。

Atheros側では、過去に報告された権限の高いレジストリ変更へつながる問題を持つ古い署名済みパッケージが、現在もPnP経路から導入可能であることを確認しました。

研究者はこれらを別のWindows機能と組み合わせ、一般ユーザーからSYSTEM権限へ到達するチェーンも実証しています。

ここでも本質は、「Microsoft署名または信頼された配布経路から導入されたソフトウェアだから、その内部ロジックまで安全とは限らない」という点です。コード署名は配布元や改ざんの有無を判断する重要な仕組みですが、署名されたソフトウェア自体に脆弱な設計や古い問題が含まれていないことまで保証するものではありません。

Windows Updateが侵害されたわけではない

Plug & Pwnについて誤解しやすいもう一つの点がWindows Updateです。

今回の研究では、攻撃者がWindows UpdateやMicrosoftの配信基盤を侵害し、悪意あるドライバーを新たに登録したわけではありません。

Windowsが既存の実在製品向けに配布している署名済みパッケージを、偽装したデバイス識別情報によって正規のPnP処理から取得させています。問題は「信頼済み配布基盤から脆弱なベンダーコードを呼び出せること」と、それぞれのコンポーネントに残る危険な処理の組み合わせです。

したがって、対策としてWindows Updateを無効化することは推奨できません。Windows Updateを停止すれば、OSやドライバーに対する重要なセキュリティ更新まで受け取れなくなります。

必要なのは、PnPで導入可能なデバイスを企業側で制御し、不要なリダイレクト機能を無効化し、OSとベンダーソフトウェアを最新状態に保つことです。

単一のWindows CVEとして管理できない難しさ

一般的な脆弱性対応では、CVE番号を資産管理システムへ登録し、該当バージョンを更新することで対応状況を管理できます。

しかしPlug & Pwnは、そのような単純な管理が難しい研究です。

Windows PnP自体は正規機能であり、研究者が示した攻撃は複数ベンダーのコンポーネントを連鎖させています。研究公開ページでも「Plug & Pwn全体」を表す単一CVEは提示されていません。

また、一部の問題は過去から存在する既知の脆弱性であり、一部は研究者が危険な設計・ロジックとして指摘しているものです。ベンダーによって脆弱性としての扱いや修正状況も異なる可能性があります。

このため企業側では、「Windows 11が最新だから対応済み」「CVEスキャナーでCriticalが出ていないから問題ない」という判断だけでは不十分です。USB利用ポリシー、デバイスインストール制御、RDPリダイレクト、不要なベンダーソフトウェアなど、構成面まで確認する必要があります。

管理者が確認すべき対策

1.USBデバイスのインストールを制御する

MicrosoftはWindows 10およびWindows 11で、グループポリシーを使用してデバイスのインストールを制限する方法を提供しています。

特定のデバイスIDを拒否するだけでなく、原則として許可されたデバイスだけをインストール可能にし、それ以外を禁止する構成も可能です。企業端末で自由なUSBデバイス利用が不要な場合は、許可リスト方式を検討する価値があります。

ただし、キーボード、マウス、スマートカード、Webカメラ、業務用計測機器などUSBを必要とする端末もあるため、一律無効化ではなく業務要件に応じたデバイスクラスや個別デバイスの管理が必要です。

2.RDPのUSB/PnPリダイレクトを確認する

RDPやVDIを利用している環境では、「サポートされるPlug and Playデバイスのリダイレクト」を許可しているか確認してください。

業務上必要でなければ低レベルUSBリダイレクトを有効化しないことが最も単純な対策です。必要な場合も、すべてのUSB機器を転送するのではなく、Microsoftが提供するデバイスインスタンスIDやデバイスクラス単位の制御を利用して対象を限定します。

3.物理USBポートへのアクセスを管理する

物理Plug & PwnではPCへのUSB接続が必要です。そのため、受付端末、会議室端末、共有PC、展示端末、無人端末など、第三者が物理的に触れられるWindows機器ではUSBポートの利用方針を確認してください。

画面ロックやWindowsログオンだけを物理攻撃への防御とせず、ポートブロッカー、筐体管理、デバイスインストール制限などを組み合わせることが重要です。

4.Windowsとベンダー製ドライバーを最新状態にする

今回の研究は、Windows本体だけでなくベンダー製ドライバーや付属ソフトウェアの実装が攻撃チェーンに含まれることを示しています。

Windows Updateを継続するとともに、PCメーカーやデバイスメーカーが提供する更新情報も確認してください。特に、過去に接続したことがある周辺機器向けのサービスや補助ソフトウェアが端末へ残っている場合は、現在も必要か確認し、不要であれば削除を検討します。

5.「署名済み=安全」と判断しない

ドライバー署名はWindowsの重要なセキュリティ機構ですが、署名済みパッケージの内部に論理的な脆弱性が存在しないことを保証する仕組みではありません。

アプリケーション制御やデバイス制御を設計する際も、単に署名の有無だけで許可するのではなく、必要なベンダー、製品、バージョン、デバイスを限定する考え方が重要です。

今回の研究で誤解しやすい点

第一に、Plug & Pwnは「Windows 11の単一ゼロデイ」ではありません。Windows PnPの正規機能と複数ベンダーのソフトウェア上の問題を組み合わせた攻撃研究です。

第二に、物理経路とRDP経路は条件が異なります。物理デモはUSBデバイスを提示できることが条件ですが、NoPlug & PwnはRDPアクセスに加え、USB/PnPリダイレクトが許可されている環境である必要があります。

第三に、Windows Updateが侵害されたわけではありません。攻撃者が不正パッケージをMicrosoftへ登録したのではなく、すでに配布されている署名済みベンダーパッケージの危険な処理を利用しています。

第四に、すべてのUSB機器を接続するとSYSTEM権限を取得されるわけではありません。研究では特定の製品識別情報と複数の脆弱なコンポーネントを組み合わせています。

第五に、公開PoCがあることと実際の攻撃で悪用されていることは別です。2026年8月11日時点で、Plug & Pwnのチェーンが実際の侵害キャンペーンで使われていることを示す公的な情報は確認できません。

まとめ

Plug & Pwnは、WindowsのPnPがデバイス接続時に署名済みドライバーやベンダー製ソフトウェアを高権限で自動導入する仕組みを攻撃面として捉え、複数ベンダーの問題を連鎖させることでWindows 11上のSYSTEM権限取得を実証した研究です。

物理USBを使ったデモでは、完全更新済みのWindows 11で利用者がログインしていない状態からSYSTEM権限へ到達しました。さらに、USB/PnPリダイレクトを許可したRDP環境では、実際のUSB機器を用意せず低権限のリモートユーザーからPnPインストールを発生させるNoPlug & Pwnも示されています。

ただし、これは「Windows 11ならUSBを挿すだけで必ず乗っ取れる」という問題ではなく、特定ベンダーのソフトウェアと環境条件を組み合わせた攻撃です。特にRDP経路は低レベルUSBリダイレクトが有効な環境に限定されます。

企業管理者は、Windows Updateを停止するのではなく、デバイスインストール制限、USBポート管理、RDPデバイスリダイレクトの見直し、不要なベンダーソフトウェアの削減を組み合わせてください。今回の研究は、正規に署名されたソフトウェアであっても、PnPによって自動導入されるコード全体を攻撃面として管理する必要があることを示しています。

参考情報

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